前回のブログでは、
「相続対策と円満相続」というテーマで、
「遺産分割対策」としての
「遺言」
「信託」
「生前贈与」
「生命保険」
の活用は、その対策をしたからと言って、
必ずしも「円満相続」には、繋がらないよ!
という指摘をさせていただきました。
「相続」って、その家族にしか分からない
その家族特有の事情もあるし、
相続人毎としての事情もあるし、
正に人それぞれ、同じ人間じゃないので、
感受性も異なるし、経済事情も全く違う。
だからこそ、
「遺言」
「信託」
「生前贈与」
「生命保険」
の活用は、「遺産分割対策」として、
有効だと思いますが、それは、あくまでも、
「遺産分割対策」として「有効」なのであって、
それは、決して、
「円満相続」に繋がる(直結する)ものではなく、
むしろ、「遺産分割対策」って、
ある意味、「円満相続」の対極に居るようなもの
・・・という趣旨の話を書き綴りました。
今回は、その代表的なものとしての、
「遺留分」について、触れていきます。
勘の良い方は、
既にこの時点で気づいていると思いますが、
例えば、よく目にしたり、耳にする
「遺言を書けば、円満相続」
というロジックは、
もう、この時点で、
「円満相続」の崩壊ですよね?
だって、「遺留分」を考える、
或いは、「遺留分対策を講じる」という時点で、
既に、「円満相続」にはならないこと、
明らかですよね?
「遺言」については、
もう、言うまでもないかもしれませんが、
ここ数年、トレンドのような形で、頻発されている
「信託(民事信託・家族信託」セミナーで、
「遺産分割対策に有効です」とか、
「遺留分対策に有効です」と言いますが、
つまり、これは、「円満相続」には、直結しないよ!
・・・が前提です。
このあたりをきちんと理解しているか否かが、
「相続対策」や「相続手続き」の実務家として、
「価値」に通じて来るところだとも思います。
理解していない人は、
「実務を知らない」単なる「セミナー屋」。
或いは、「仕事くれくれ屋」、
はたまた「手続き屋」。
実務をやっていたら、とてもじゃないけど、
「円満相続」を盾に「遺産分割対策」の提案なんて、
できません。
さて、こんな話で終わりにしてしまっては、
前回のブログの内容と変わらないので、
今回は、ここからの深堀りです。
・・・相変わらず、長くなりそうです(笑)
「遺留分対策」で良く感じるのは、
上記を含め、そもそも、実務を知らないで、
提案をしている方が、多いということ。
「実務を知らない」って、どういうこと?というと、
決して、国家資格を保有していらっしゃる方々を
侮辱するわけではありませんよ(笑)
そもそも、遺留分を侵害されて、
遺留分の請求を検討したい相談者って、
最終的には、弁護士にところに行きつくじゃないですか?
それは、もう、「遺留分を請求する」という時点で、
紛争性があるので、税理士や、
或いは、同じ法律家でも、行政書士や司法書士だと、
初回の相談で、相談はされるものの、
非弁行為の絡みがあるので、止むを得ないと思うんですが、
ある意味、「リリース」しちゃいますよね?
・・・という意味から、
「実務を知らない」という表現をしています。
許してください(笑)
正確に表現すると、
「遺留分の請求に関する実務経験が無い」
という表現が正しいのかな?
とか、熱い感じで主張してしまった癖に、
きちんと、伝わらなかったら、
僕も、ダメダメですね(笑)
はい、・・・話を戻すと、
なので、
「遺留分の請求に関する実務」を「知っている」方って、
やっぱり、弁護士になりますよね?
それも、ごく、限られた。
僕の表現する「知っている」というのは、
遺留分でいえば、単に、請求をするとかではなく、
実務を知った上で、どんな戦略を以って「闘う」か、
つまり、闘い方を知ってるか?
という意味での「知っている」です。
だから、このレベルでの「遺留分対策」や、
「遺留分の請求」を「知っている」弁護士は、
「ごく、限られた」という表現になるんです。
こんな感じで、書いていると、
「あれ、佐藤って弁護士だっけ?違うよな?」
「お前、ただのノーライセンスのコンサル風情だよな?」
「元々、不動産屋だろ?」
「何様だよ!」
とか、色々、厳しいご指摘、ご意見いただくんですが、
良いんです!
何故か?
それは、全部、間違っていないから(笑)
そう、全部、正しいから(笑)
僕は、弁護士でもないですし、
行政書士でも司法書士でも、税理士でもありません。
一般的に言えば、「相続」の実務家に必要そうな
国家資格を持たない、ノーライセンスです。
一応、宅地建物取引士は、持っていますし、
元々は、バリバリの不動産営業マンでしたし、
9月まで代表をしていた株式会社brandsでも、
相続コンサルティングをしながら、
宅建免許をもち、不動産取引をしていたので、
間違いのない事実です。
だから、全て、事実なんです。
「はい、正解!」て感じです。
けど、だからこそ、
「遺留分対策」や「遺留分の請求」の
「実務」を知っているんです。
「ん?」と思うかもしれませんが、
僕と普段から一緒に仕事をされている方や、
僕の事を個人的にご存じな方は、
お分かりいただけると思いますが、
僕は、「遺留分対策」や「遺留分の請求」について、
「知っている」弁護士から、無茶苦茶、相談されます。
「これ、どうしたら良い?」
「どういう戦略で行こうか?」
「ちょっとお知恵、拝借できますか?」
とか。
なんで、僕のところに、そんな話が来るのかって言うと、
以前のブログの内、
でも触れている通り、
相続財産に占める不動産のウエイトって、
無茶苦茶高いんですが、
その不動産の評価をロジカルな論点を持ちながら、
「市場流通価格」と「時価」の違いを理解した上で、
遺産分割調停、遺産分割審判、遺留分対策、遺留分の請求
の実務を、僕が、知っているから・・・でしょうか?
ちなみに、普段は、いちいち数えていませんが、
4年前は、この手の案件に携わった件数が、
異常に多かったので、数えてみたら、
「遺産分割調停」、「遺産分割審判」に係る案件で、
僕が携わった案件の成績は、21戦21勝でした。
僕の話で、とてつもなく、脱線しましたが、
つまり、「遺留分対策」や「遺留分の請求」を
「知っている」実務家は、弁護士の中でも、
全員が全員、「戦略を以って戦っている」
のが実態で、かなり、稀少です。
何が言いたいか?というと、
単に、「相続法には、こう書いてある」とか、
「マニュアルでは、こうなっているから」とか、
その通りの手続きをする専門家
というのは、僕の定義の中では、
「知っている」実務家には該当せず、
単なる手続きをしている実務家、
つまり、「手続き屋」だということです。
無茶苦茶、失礼な表現ですが、
でも、無茶苦茶、重要な点なんです。
だって、「遺留分の請求をしたい!」という
相続についての悩める相談者からしたら、
「単なる手続き屋」に依頼するか、
「知っている実務家」に相談するかで、
本当に、数千万、数億、違ってきますからね?
尚、玄人好みの話かもしれませんが、
遺留分の請求をする際、
もう、これって駆け引きの世界ですが、
裁判上の手続きにしない方が、
請求する側の依頼者にとっても、
請求される側にとっても、
メリットがあることがあります。
「どういうこと?」て、
思われる方もいらっしゃると思いますが、
それは、別の機会に(笑)
こういうのって、
実は、すごい些細なことで、
たった1つのポイントだったりするので、
話をすると、「なーんだ、そんなことか!」とか、
「もったいぶって、大したことない!」とか
言われるケースが圧倒的に多いんですが、
僕としては、それこそ、
「おいおい、知らなかったくせに!」
と思ってます(笑)
で、今日は、もう少しだけ。
「遺産分割対策」として、
「遺言」
「信託(民事信託・家族信託)」、
「生前贈与」
を検討される方にお伝えしたい点として、
無茶苦茶、重要な要素があります。
それは、「不動産の評価」です。
「ほら、やっぱり不動産屋の匂い、出してきた!」
「結局は、不動産なんでしょ!?」
「所詮、不動産屋!」
とお思いの方は、「相続コンサルタントの定義」を
よく見てくださいね(笑)
そう、この「不動産の評価」、
意外と、というか、ほぼほぼ、
税理士、行政書士、司法書士、弁護士、
の方々が、疎かにしてしまう点ですね。
では、「不動産の評価」を何で見ているのか?
「時価」で見ているのか、
或いは、「市場流通価格」で見ているのか?
更にあ、毎年、遺産分割対策後の評価の推移を
トーレスしているのか・・・
ここ、きちんと抑えておかないと、
アナタが講じた「遺産分割対策」が原因で、
アナタ宛にいらした相続の相談者は、
大きなリスクを背負う必要があるということです。
税理士の皆さん、
「遺産分割対策」を講じる時、
相続税法上の評価額で、
不動産の評価をしていませんか?
ちょっと、極端な例ですが、
数年前に親しい弁護士から相談されたケースで、
首都圏の地主一家のケースを少しだけ。
当然、地主ですから、顧問税理士がおり、
相続税対策を推し進めていました。
地主さんの子ども達は4人兄弟(姉妹)。
ま、地主ですから、かつての戸主制度の頃の、
所謂、家督相続に象徴されるように、
「長男に」相続させたい・・・
仲が悪く、揉めることが想定されていたので、
概ねの節税対策ができたところで、税理士主導で、
公正証書遺言を作成することになりました。
ご本人、長男が顧問税理士と協議しながら、
金融機関から借り入れをしながら、
コツコツと節税対策をし、借入の合計は、20億超。
当然、いくら地主といえど、金融機関としては、
長男に「連帯債務者」になってもらえないと・・・
となるため、それも含め、節税対策を進めました。
結果、資産も20億前後だが、残債も20億前後となり、
相続が発生しても、正味財産(純資産)は「0」、
よって、遺言を執行すれば、全財産が長男に名義となり、
相続税も発生しない・・・という目論見ができたところで、
遂に、公正証書遺言を作成しました。
数年後、地主(ご本人)が他界され、相続が発生。
長男は、遺言を執行し、一件落着と思っていたところ、
四十九日の法要を終えた翌日、
3人の兄弟姉妹の代理人弁護士から、
遺留分の請求が届きました・・・
長男と、税理士のシミュレーション上、
資産は20億前後、残債も20億前後。
よって、純資産は、「0」円。
故に、遺留分の請求はないはず・・・
と思っていたところ、
3人の兄弟姉妹の代理人の主張は、
資産は50億弱、残債が20億前後、
故に純資産は、「30億円弱」。
よって、遺留分の請求・・・
ちなみに、僕の立場は、
この遺留分の請求をされた弁護士のアドバイザー。
そりゃ、もう、長男も、長男の顧問税理士も、
無茶苦茶怒っていましたが、ご存じの通り、
全ては、顧問税理士のミス。
顧問税理士は、不動産の評価を、
相続税法上の評価で、評価しちゃってました。
笑ってしまうのが、
ご自宅の土地の評価は、
ご丁寧にも小規模宅地の特例を使ったり、
賃貸物件も
土地は、貸家建付地評価、
建物(家屋)は、借家権を考慮していたり・・・
おかげで、地主である長男は、
父親から相続した先祖代々、受け継いできた
不動産の内、残債の無い超優良資産である
賃貸物件6件を手放すこととなり、
自身の手元に残ったのは、
優良な資産と言えば、
「地主」の証である広大な「自宅」のみ。
その他は、節税対策のために過度の借入をしたため、
返済に四苦八苦するような不動産のみ。
生活を楽にするためとはいえ、
「地主」の象徴である
広大なお屋敷のような「自宅」も売るに売れず、
今も返済に追われるような状態・・・です。
さすがに、ここまでの事例は、
僕も滅多に遭遇しませんが、極端な話、
不動産の「市場流通価格」を知らないと、
こういうリスクがあるということです。
他にも、行政書士や司法書士のケースでも、
大なり小なりありますが、法律家の場合は、
固定資産評価額を不動産の「時価」として、
「遺産分割対策」を講じてしまう方も多いですね。
中には、以前、別のブログでお話しした
「市場流通価格と1物5価」の関係性を理解した上で、
一応、固定資産評価額をベースに、
土地については、0.7で割り戻して、
「公示価格・基準価格」ベースで、
「遺産分割対策」を講じる方も、
徐々に増え始めたように思います。
一括りにされてしまうと、
怒られてしまうかもしれないので、
多少、便宜を図りますと(笑)、
以前、税金の話でもお話ししましたが、
弁護士の場合は、
「権利を取得してるんだから、当然でしょ!」
「請求されても、払う原資はあるでしょ!」
という認識のもと、
「そんなことより、早く、対策を打つべきだ!」
という方が多いですよね。
ま、確かにそうなんですが、最終的に、
先程の地主さんのように、
売る羽目になってるケースが多いです・・・
という風に、弁護士は、「物」に固執せずに、
「経済的な利益」を優先される方も多いと思います。
税理士、行政書士、司法書士も含め、
当然、レベル感は色々ありますが、
やあり、不動産の市場流通価格を
あまり気にせず、
「遺言」
「信託」
「生前贈与」
等の「遺産分割対策」を講じている方が、
多いように思います。
こういう話をすると、
「だって、不動産の価格なんて分からない」とか、
「不動産屋さんは、信頼できない」とか、
「どうせ、査定なんて、あってないようなもの」とか、
「そもそも、市場流通価格とか、勝手に定義するな!」とか
色々、言われるんですが、
大切なのは、アナタの講じた「遺産分割対策」のおかげで、
アナタに相続の相談をされた相談者に大きな損害、
想定外の出費・支出が生じてしまう・・・
そんな「リスクがある」ということ。
「リスクを取るのは本人の責任(自己責任)」とか、
「士業は、対策を打つための手続きの代行に過ぎない」とか、
中には、フェードアウトしようとする方が、
少なからず、いらっしゃるのが、残念です。
ま、これは、国家資格を持たれる士業に関わらず、
相続コンサルタント等が、相続の専門家として、
相続の相談にいらっしゃる相談者に対して、
「遺産分割対策」等の「対策」を講じるのであれば、
リスクを含め、デメリット等も
きちんと伝える必要がありますし、
そもそも、自身が、提案、或いは
講じようとしている、その「対策」に、
どんなリスクや、デメリットが潜んでいるのか?
まずは、そこからなんじゃないか?と思います。
コメント