相続の実務家に必要な「市場流通価格」と「1物5価」

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「市場流通価格」て、

耳にされたこと、ありますか?

普通、無いですよね?

 

ごめんなさい。

さも、誰もが知っていて当然かのように

質問しましたが、

そもそも、この「市場流通価格」は、

僕が、名付けたものです。

 

名付けたといっても、読んで字の如く、

市場で流通する価格・・・ つまり、

売ったり、買ったりする際の成約価格

とでも言いましょうか?

 

でも、それだったら、似たような意味で、

「時価」って言葉も耳にされますよね?

 

そうなんです!

「時価」って、普通に考えれば、

「市場流通価格」と同じ意味になるはずなんです。

 

では、なぜ、いちいち、

「時価」ではなく、「市場流通価格」等という

ネーミングしたのでしょうか?

 

意味的には、何か革新的な言葉でもないし、

読めば、意味分かるし、普通ですよね?

 

名付けの親として、

有名になりたいからでしょうか?(笑)

 

別に、そういうわけではありません。

 

その理由に入るにあたって、

少し、余談を・・・

 

「市場流通価格」という言葉は、

このブログを見る迄は、

耳にされたことが無かったかと思います。

けど、目にされた記憶は・・・、

何となく、あると思うんですよね?

 

何故かって?

それは、「市場流通価格」というネーミングが、

「市場」で「流通」する「価格」

と、各々の分解された熟語をよく目にされているため、

「市場流通価格」と3つの熟語が並んでも、

目にしたことがあるような錯覚なんだと思います。

 

 

では、この言葉なら、

耳にされたことがある方も、

いらっしゃるのではないでしょうか?

 

そう、それは、「1物5価」、

場合によっては、「1物4価」かもしれません。

 

初めて目にされる方も

いらっしゃるかもしれないので、

僕なりの説明をさせていただきますね。

 

 

そもそも、この「1物5価」とか、

「1物4価」って、何なのか?というと、

土地の価格のことなんです。

 

土地の価格って、実は色んな側面から、

色んな価格が付けられているんです。

 

 

↑をみていただくと、

左から順に、

1)公示価格・基準価格

2)相続税路線価

3)固定資産評価額

4)時価(鑑定評価額)

5)市場流通価格

とあります。

 

1)の公示価格・基準価格は、

毎年、国や都道府県が発表する

公示地価や基準地価に基づき、

算出される価格。

 

では、この公示価格・基準価格って、

何のためにあるのかというと、

そう、公示価格や基準価格って、

国、都道府県がみなす土地の「時価」なんです。

 

具体的には、国や都道府県等の行政が、

不動産取引を行う場合の指針とする価格。

 

森友学園の土地の価格がどう・・・

とか、ありましたよね?

正に、ああいった時のベースとなるのが、

この公示価格や基準価格。

 

ちなみに、この公示地価や基準地価は、

そのエリア等において、

標準的な宅地とされるものに付され、

我々は「ポイント」と通常言います。

 

ですので、やたらめったら、

ポイントがあるわけではありません。

 

国が定めるものが、公示地価。

けれども、国が定めるポイントも、

全て網羅されているわけではないので、

各都道府県が公示地価と同じ基準で、

公示のポイントを補足するように、

基準地価のポイントが定められています。

 

なかには、公示地価のポイントが、

基準地価のポイントでもあったりすることも、

よくあります。

 

 

2)相続税路線価

これは、もう、言わずと知れた

相続に最も直接的に関わってくるものですね。

そう、相続税のベースとなる価格。

市街化区域内の公道においては、

大抵、この相続税路線価が付されています。

 

相続税法上、相続財産の評価は、「時価」。

そして、その「時価」の定義が難しいからこそ、

財産評価基本通達が定められています。

 

相続税法上の財産評価を行う場合、

財産評価基本通達に則っとると、

土地の評価は、

 

・路線価方式

・倍率方式

の2つの方式がありますが、

市街化区域内においては、

一般的に路線価方式での評価となり、

この路線価方式の場合、

相続税路線価に基づいて、評価をする。

 

・・・ここは、大丈夫ですよね?

 

 

3)固定資産評価額

こちらは、その名の通り、

固定資産税、都市計画税を

課税するための評価額。

 

ご存じの方も多いと思いますが、

相続税路線価のように、

「固定資産税路線価」が付されています。

 

尚、相続税路線価は、一般的に、

私道には付されていないケースが多いですが、

固定資産税路線価は、固定資産税を課税することが、

目的ですので、公道だけでなく、私道にも、

付されているケースが多いです。

 

4)時価(鑑定評価額)

さ、出ました! ・・・「時価」

こちらは、裁判において、

不動産評価(鑑定)が必要になったり、

金融機関が、融資を実行する等と言った場合、

特定の不動産を担保に取るために、

その不動産の担保評価をすることがあります。

 

これらのように、裁判上、公平な視点から、

不動産評価を求められる場合、

また、金融機関が、担保評価を行う場合、

必要に応じて、不動産鑑定士が作成した

鑑定評価書に基づいた価格が

採用されることが一般的です。

 

不動産鑑定士は、

不動産の評価や鑑定を有償で行うことを

国が唯一認めた資格であり、

不動産鑑定士は、国(国土交通省)が定めた

不動産鑑定評価基準に則って評価することになります。

 

5)市場流通価格

ようやく、来ました ・・・ 今日の主役です!

ちょっと、復習です。

 

「市場流通価格」って、何でしたっけ?

 

そう、読んで字の如し・・・

「売ります」、「買います」が成立する

実体経済上で成約する価格のことです。

 

あれ? 

・・・ 4)の不動産鑑定士の評価する時価 と違うの?

・・・ と思われますよね?

 

そうなんです。違うんです。

 

・・・これは、仕方がないことなんですが、

4)の不動産鑑定士が評価する時価、

つまり、時価(鑑定評価額)は、

既に申し上げた通り、不動産鑑定評価基準に則って

評価・鑑定しないといけないんです。

 

そう、ある程度、基準が定められているんです。

 

ですが、人の気持ちって、

「基準だと●●だから、●●」・・・のように、

論理とか理屈じゃないですよね?

 

例えば、どうしても欲しい土地があって、

その土地が角地だった場合、

本当にどうしても欲しかったら、

予算次第だと思いますけど、

5割増の金額でも買いますよね?

 

そうなんですよ!

第三者的には、冷静ですから、

どんなに良い土地でも。5割増しはちょっと…

と思うじゃないですか?

 

でも、実際、僕の友人は、

南東角地の土地を

中間地の5割増しで購入してました。

 

もう、これって、基準がどうとか、

論理とか理屈じゃなくなってますよね?

「欲しいから買う!」ただ、それだけですよね?

 

なんか、夫婦喧嘩みたいですよね?

僕、家内と喧嘩すると、言われるんです!

「夫婦喧嘩は理屈じゃない!感情だ!」て。

 

こちらの僕のブログをご覧いただいている方は、

薄々気づいていると思いますが、

僕、僕の凄い、理屈っぽい奴なんです!

 

なので、夫婦喧嘩のような痴話喧嘩とかも、

家内の主張も、論理的でなかったり、

理にかなっていないと、ダメなんです。

 

そう!だから僕からの主張は、

夫婦間でも無茶苦茶、ロジカルなんです!

理にかなっているんです!

 

・・・でも、言われるんです。

 

「理屈としては、そうだけど、

 夫婦喧嘩に理屈は必要ない!感情だ!」

って・・・

 

 

皆さんも、ご夫婦や、彼氏彼女と、

きっとそうですよね?

 

・・・きっと・・・ あれ?僕だけですか?

 

すみません、戻ります。

そう、なので、消費者、

つまり土地の売買となると、

土地は、唯一無二ですから、

感情的になってしまうこともあり、

一定の基準から逸脱してしまうことがあるので、

 

4)時価(鑑定評価額)

5)市場流通価格

は、別で考えないといけないんです。

 

そして、大切なことは、

同じ土地でも、

同じ「時価」という言葉でも、

上記 1)乃至 5)の中でも、

 

1)公示価格・基準価格

2)相続税路線価

3)固定資産税

4)時価(鑑定評価額)

5)市場流通価格

 

これら、全てが、「時価」なんです。

 

つまり、同じ「時価」という言葉でも、

誰が話しているか…によって、

この「時価」の定義が大きく異なるんです。

 

国や行政の担当者と話している時の「時価」は、

1)公示価格や基準価格、

 

税理士や税務署等と話をしている時の「時価」は、

2)相続税路線価、

 

市区町村の税務課と固定資産税や都市計画税の

話をしている時の「時価」は、

3)固定資産評価額、

 

不動産鑑定士等と話をしている時は、

4)時価(鑑定評価額)、

 

不動産業者や、相続人間での遺産分割協議等で、

出てくる「時価」は、

5)市場流通価格

 

になるんです。

つまり、同じ土地でも、

「時価」の定義が5つ存在するため、

実務上、混乱を招いてしまうんです。

 

そのため、あえて、

字の意味がそのままで、意味も理解もしやすく、

且つ漢字6文字で、ちょっと厳かなかんじ?

なんとなく、どこかの教科書的なものに

載っていそうで、学問(学術)っぽいかんじで、

テクニカルワード(専門用語)っぽく、

聞こえなくもない「市場流通価格」という

ネーミングにしてみました(笑)

 

しかも、意外と、実務においても、

肌感覚ではありますが、非常に役立っています。

 

クライアントとの打合せに税理士や

行政書士、司法書士、弁護士等の法律家の方々等が

一堂に揃って、税務の件、遺産分割協議、登記等、

ディスカッションする際、

皆さんが「時価」という言葉を使うと、

「一体、どの時価!?」…となり、混乱を招きます。

その最大の被害者は、クライアント。

 

なので、そこで、遺産分割に関する内容の時は、

「市場流通価格」と統一することで、

クライアントが悩まず、

スマートにディスカッションが進みます。

 

…且つ「市場流通価格」って、上述の通り、

ちょっとテクニカルワードっぽい響きじゃありません?

なので、クライアントも言い終わった後、

若干ですが、優越感っぽい感じと、

子恥ずかしい感じの表情をされていて、

言い出しっぺの僕としては、「たまりません」(笑)

 

さて、とうことで、少し話が長引きましたが、

「土地の価格は、5種類あるんだ!」

という事が分かったかと思います。

 

以上から、1つの土地でも、

1)公示価格・基準価格

2)相続税路線価

3)固定資産評価額

4)時価(鑑定評価額)

のように、4つの価格があることから、

「1物4価」と呼ばれたり、

 

1)の内、公示価格と基準価格と分けることで、

「1物5価」等と呼ばれます。

 

そして、僕の場合は、これに、

5)市場流通価格 が、加わるわけです。

 

 

尚、この1)乃至5)については、

原則的な話にはなりますが、

一定の関係性が保たれています。

 

 

 

↑の通り、

 

1)公示価格・基準価格を

  100とした場合、

 

2)相続税路線価は、80

3)固定資産評価額は、70

4)時価(鑑定評価額)は、110

5)市場流通価格は、110~120

 

  という関係性です。

  これは、原則的なものですが、

 

  1)乃至3)迄は、

    公的価格(評価)と言われ、

 

  2)の相続税路線価は、

    国税庁より、地価公示の80%程度、

 

  3)の固定資産評価額は、

    総務省より、地価公示の7割を目安

    と定められているため、

 

公的価格(評価)については、

一定の関係性が保たれていることが、原則です。

 

ですが、例えば、商業地域の場合等は、

この関係性が大きく崩れていることがあります。

 

その理由として、

3)固定資産評価額は、3年に1度、

  「評価替え」が行われますが、

  逆の見方をすれば、3年間は、

  原則、据え置かれます。

 

  一方で、

  1)地価価格・基準価格 や、

  2)相続税路線価

  は、どうでしょう?

  毎年、見直しがかかりますよね?

 

  これもあって、

  特に地価上昇の局面等で、

  その影響を受けやすい商業地では、

  上記の関係性が、

  必ずしも保たれているとは、限りません。

 

そもそも・・・商業地の場合、

1)公示価格(地価公示)と、

5)市場流通価格に

大きな乖離が生じていることから、

その関係性は薄まっているように思えます。

 

 

では、住宅地ではどうでしょうか?

実は、首都圏においては、

上記の1)乃至5)の関係性は、

ほぼほぼ、保たれています。

 

というのも、僕は、

複数の建売会社や不動産仲介会社にて

顧問になっていたり、

業務提携していることから、

毎年、500件以上の住宅用の不動産売買の

成約事例を目にすることができるため、

都度、都度、この関係性を確認していますが、

首都圏においては、ほぼほぼ、

この関係性が保たれています。

 

 

さて、ここからが本題ですが、

相続の実務家にとって、

この関係性が保たれていることを知っていると、

どんな良いことがあるのでしょうか?

 

僕の場合、相続の相談を受ける際、

初回相談時に固定資産資産税の

納税通知書等をご用意いただくのが慣習です。

 

何故だと思いますか?

この納税通知書があると、

無茶苦茶、便利なんです。

 

それは、土地であれば、所有不動産の

・所在

・地番

・地積

・課税状況から使用用途

・課税状況から有効宅地

等を認識でき、

 

建物であれば、

・所在

・家屋番号・

・構造

・床面積

・築年月

 

等を認識できますよね?

 

他に、何かありませんか?

 

そう、それは、

納税通知書には、その不動産の、

固定資産評価額が記載されているという事。

 

固定資産評価額が分かると、

どんな良い事があるんでしたっけ?

 

そう、「1物5価」の関係性が保たれている場合、

固定資産評価額 ÷ 70 × 80

・・・或いは、

 

固定資産評価額 ÷ 0.875

によって、2)相続税路線価を推測することができ、

堅めにシミュレーションすのであれば、

固定資産評価額 ÷ 0.7

によって、2)公示価格を推測でき、

 

この推定公示価格に、

1.1~1.2を乗じることで、

5)市場流通価格を推測することまで、

可能となる・・・とてつもなく重要なメリットです。

 

もちろん、本来は、

2)相続税路線価も、

5)市場流通価格も、

きちんと、路線価図を調べたり、

不動産業者に査定をしていただく

必要はありますが、

 

この関係性を理解していることで、

初回面談においても、

話が進むスピードが圧倒的に早くなる

・・・というメリットがあります。

 

だからこそ、「市場流通価格」や「1物5価」は、

相続の実務家にとっては、不可欠な存在なんです。

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